美術の授業では、作品を制作することと同じくらい、作品を鑑賞することも大切にしています。
自分の作品を振り返ったり、友達の作品をじっくり見たりすることで、制作中には気づかなかった発見が生まれます。
同じ課題に取り組んでいても、色や形、材料の使い方、表現したいことは一人ひとり違います。
その違いを発見し、自分の言葉で表現するのが「鑑賞レポート」です。
今回は、美術Ⅰ・美術Ⅱ・発展美術など、さまざまな美術の授業で活用できる鑑賞レポートの書き方を紹介します。
1.鑑賞レポートは、何のために書くの?
鑑賞レポートは、作品の上手・下手を判断するためのものではありません。
作品をよく見て、自分が感じたことや考えたことを整理するためのものです。
例えば、友達の作品を見て、
「きれいだな」
「面白いな」
「なんだか不思議だな」
と思うことがあります。
そこで、もう一歩踏み込んで考えてみましょう。
「どこを見て、そう感じたのだろう?」
「どうして、この色や形が印象に残ったのだろう?」
このように、自分の感じたことの理由を探していくことで、作品を見る目が育っていきます。
2.鑑賞するときの4つの視点
作品を見るときには、次の4つの視点を参考にしましょう。
① 第一印象 ― 何を感じた?
作品を見たとき、最初にどんな印象を受けましたか?
明るい、静か、力強い、優しい、不思議、楽しい、緊張感があるなど、感じたことを素直に言葉にしてみましょう。
② 表現の工夫 ― どこに注目した?
作品の色、形、構図、材料、技法などに注目しましょう。
絵画なら筆のタッチや色の重なり、立体作品なら形や量感、デザイン作品なら文字や余白の使い方なども鑑賞の手がかりになります。
③ 感じた理由 ― なぜそう思った?
「きれいだった」「面白かった」だけで終わらず、なぜそう感じたのかを考えましょう。
例えば、
「青と緑の近い色が組み合わされていて、落ち着いた印象を受けました」
「大きな曲線が画面全体に広がっていて、動きを感じました」
というように、作品の具体的な部分と自分の感想を結びつけます。
④ 発見 ― 自分は何を学んだ?
友達の作品から新しく気づいたことや、自分の制作にも取り入れてみたいと思ったことを考えましょう。
鑑賞は、次の表現につながる大切な学びでもあります。
3.自分の作品を振り返るとき
自分の作品については、次のことを考えます。
① 表現したかったこと
どのようなテーマやイメージを表現しようとしましたか?
② 特に工夫したこと
色や形、構図、材料、技法など、どこを工夫しましたか?
③ うまくいったこと・難しかったこと
制作の中で発見したことや、試行錯誤したことを書きましょう。
④ イメージを表現できたか
最初に考えていたことを作品に表現できましたか? その理由も考えましょう。
自分の作品を振り返るときには、できなかったところばかりを見る必要はありません。
自分が工夫したことや、新しくできるようになったことにも目を向けましょう。
4.友達の作品を鑑賞するとき
友達の作品を見るときには、まず作品のよいところや、心に残ったところを見つけましょう。
例えば、次のように書くことができます。
例① 色について
「青と緑を中心にした配色に統一感があり、静かで落ち着いた印象を受けました。」
例② 形や構図について
「円を画面の端に配置したことで、広がりや動きを感じる構成になっていると思いました。」
例③ 技法について
「鉛筆の濃淡が丁寧に描き分けられていて、物の立体感がよく伝わってきました。」
例④ 発想について
「身近なものを意外な形に置き換えていて、発想の面白さを感じました。」
大切なのは、自分と違う表現を否定するのではなく、その作品ならではの魅力を見つけることです。
また、作品の意図は見た目だけでは決めつけられません。作者の説明を聞くことで、新しい発見が生まれることもあります。
5.鑑賞レポートを上手に書くコツ
鑑賞レポートを書くときには、次の順番を意識すると、文章をまとめやすくなります。
「私は〇〇と感じました。なぜなら、作品の△△という部分に□□の工夫が見られたからです。」
例えば、
「私はこの作品から、穏やかな印象を受けました。なぜなら、柔らかな曲線と淡い青色が組み合わされていて、水がゆっくり流れているように感じたからです。」
このように、感じたことと、その理由を具体的に書くだけで、作品をしっかり観察した文章になります。
長い文章を書くことよりも、自分の言葉で具体的に表現することを大切にしましょう。
6.鑑賞レポートもデザインしてみよう
鑑賞レポートは、文章だけでまとめる必要はありません。
スケッチブックの1ページを使い、作品の特徴に合わせて、色や形、文字の配置を工夫してみましょう。
例えば、海をイメージした作品なら、青い色や波のような曲線を使ってレイアウトすることもできます。
植物をテーマにした作品なら、葉の形や緑色を取り入れてもよいでしょう。
作品の一部分を小さく描いたり、使った色を並べたりすることもできます。
ただし、飾りが多すぎて文章が読みにくくならないように気をつけましょう。
「伝えたいことを、見やすく、美しくまとめる」
これもグラフィックデザインの大切な学習です。
7.鑑賞を通して、自分の表現を広げよう
美術には、一つの正解があるわけではありません。
同じ課題、同じ材料、同じ時間で制作しても、完成する作品は一人ひとり異なります。
友達の作品を鑑賞すると、自分では思いつかなかった発想や表現方法に出会うことがあります。
そして、自分の作品を振り返ることで、今まで気づかなかった自分自身の工夫や成長を発見することもできます。
鑑賞とは、作品を通して他者の感じ方や考え方に触れ、自分の世界を広げていく時間でもあります。
作品を見ることは、人それぞれの違いや、自分らしさを大切にすることにもつながっていく。
そんな鑑賞の時間を、美術の授業で育んでいきたいと思います
