美術教育

私が美術・アートをとおして伝えたいこと

自分らしさを大切にするために

長い間、美術を教えたり、子どもたちとアートに向き合ったり、自分自身も絵を描いたりしてきました。

その中で、私が美術やアートを通して本当に伝えたいことは何だろう、と考えることがあります。

絵が上手に描けるようになること。
色を美しく組み合わせられるようになること。
美術の知識や技法を身につけること。

もちろん、それらも大切です。

けれど、もっと根っこのところに、私がずっと大切にしてきたものがあります。

それは、

「自分らしさを大切にしてほしい」

ということです。


同じものを見ても、感じることは違う

美術の授業をしていると、同じモチーフを前にしていても、生徒たちの作品は驚くほど違ったものになります。

大きく描く人。
小さなところに目を向ける人。
鮮やかな色を選ぶ人。
静かな色を選ぶ人。
丁寧な線を重ねる人。
勢いのある線を引く人。

同じものを見ているのに、同じ絵にはなりません。

なぜなら、そこにはその人の「見方」が表れるからです。

何に心を動かされたのか。
何を美しいと思ったのか。
どんな色に惹かれたのか。
どこを面白いと思ったのか。

それは、誰かに決めてもらうものではありません。

「私は、こう感じた」

その小さな感覚こそ、その人らしさの始まりなのだと思います。


「正解」が一つではない時間

学校生活では、正解を求められる場面がたくさんあります。

けれど、美術には一つだけの正解がありません。

先生と違ってもいい。
友達と違ってもいい。

「私はこの色が好き」
「私はここが気になる」
「私はこう表したい」

そう言えることが、美術ではとても大切です。

だから私は、美術の時間が、誰かと比べて優劣を決めるだけの時間ではなく、

自分の感じ方を自分で認める時間

であってほしいと思っています。


上手に描けなくてもいい

「絵が苦手です」

長く美術を教えていると、何度もこの言葉を聞きます。

でも、私はいつも少しもったいないなと思います。

アートは、上手な人だけのものではないからです。

思うように線が引けなくてもいい。
きれいに塗れなくてもいい。
途中で迷ってもいい。

むしろ、

「どうしようかな」
「こっちの色のほうが好きかな」
「私はこうしてみたい」

と迷いながら選んでいくところに、その人自身が表れてきます。

出来上がった作品だけではなく、自分で感じ、自分で選び、自分で決めていく過程にも、アートの大切な意味があります。


自分を知る、自分を表す、自分を受け入れる

私がこれから育てていきたいアートプログラムには、一つの大きな柱があります。

それは、

自分らしさを大切にできるようになること。

そのために、アートを通して、

自分を知る。
自分を表す。
そして、自分を受け入れる。

そんな経験を重ねていけたらと思っています。

好きな色を選ぶ。

心に残ったものを描く。

自分だけの形をつくる。

言葉にならない気持ちを、色や線にしてみる。

そうした小さな選択を積み重ねながら、

「私はこれが好きなんだ」

「私はこんなふうに感じるんだ」

「人とは違うけれど、これが私なんだ」

と気づいていく。

それは、自分自身との小さな対話なのかもしれません。


「自分らしさを愛せますか」

私自身も、ずっと自分らしく生きられてきたわけではありません。

迷ったり、人と比べたり、自分に自信を持てなかったりしながら歩いてきました。

そんな私の人生に大きな影響を与えた言葉の一つが、

「自分らしさを愛せますか」

という問いでした。

自分らしさとは、立派なところだけではありません。

得意なところも、不得意なところもある。
強い日もあれば、弱い日もある。
迷うこともある。

それでも、

「これが今の私なんだ」

と、自分を見捨てずにいられること。

私は、そんなところから本当の自己肯定感は育っていくのではないかと思っています。


アートには、心をほどく力がある

色を選んでいるとき。
夢中になって線を引いているとき。
手を動かして何かをつくっているとき。

ふっと頭の中が静かになることがあります。

言葉にできなかったものが、色や形になって目の前に現れることもあります。

アートには、人の心を少しゆるめ、自分自身に戻してくれる力がある。

私は長い間、子どもたちや生徒たちと関わり、自分自身も制作を続ける中で、そのことを何度も感じてきました。

だからこれからも、学校の美術教育だけにとどまらず、さまざまな場所でアートの時間を届けていきたいと思っています。


私が届けたいアート

上手に描くためだけのアートではなく。

誰かに評価してもらうためだけのアートでもなく。

自分の心に耳を澄ませるためのアート。

自分の感じ方を大切にするためのアート。

そして、

「私は私でいい」と、自分らしさを大切にできるようになるためのアート。

そんな時間を、これから少しずつ形にしていきたいと思っています。

一枚の紙に引いた一本の線からでも、それは始められます。

その線は、誰かと同じでなくていい。

その人が選んだ、その人だけの一本の線だから。

私はこれからも、美術やアートを通して、

「あなたが感じたことを、大切にしていいんだよ」

ということを伝えていきたいと思っています。

美術には、正解が一つだけあるわけではありません。

同じものを見ても、感じ方は人それぞれ。
選ぶ色も、描く線も、表したいものも違います。

だからこそ美術の時間が、

「私はこう感じる」
「私はこれが好き」
「こんな表現もあっていい」

と、自分自身の感覚に気づく時間になってほしいと思っています。

作品をつくることを通して、自分を知り、ほかの人との違いにも気づく。

そんな美術の学びを、これからも大切にしていきたいと思います。

美術の授業づくり

長く美術の授業に関わる中で、教材そのものと同じくらい大切だと感じてきたのが、**「どのように授業をつくるか」**ということです。

制作が得意な生徒もいれば、絵を描くことに苦手意識を持っている生徒もいます。

「上手・下手」だけではない美術の楽しさを、どうすれば伝えられるのか。

授業時間の組み立て方、生徒への声かけ、教材の工夫など、日々の実践から考えてきたことも記録していきます。

高校の美術授業で実践してきた題材や教材、ワークシートをまとめています。

美術の授業で大切にしたいのは、ただ「上手に描く」ことだけではありません。

色や形、素材と出会い、感じること。
自分で考え、試しながら、自分なりの表現を見つけていくこと。

そんな美術の時間をつくるために、実際の授業で行ってきた実践を少しずつ記録していきます。

実際に行った授業を、一つの題材ごとに紹介します。

授業のねらい、授業時数、準備するもの、導入、制作の流れ、評価、生徒への声かけなど、実際の授業で使える形で記録していきます。

また、実践してみて分かったことや、次回改善したいことも残していきます。


授業資料・ワークシート

授業で実際に使用した資料やワークシートをまとめていきます。

  • 課題説明プリント
  • 制作ワークシート
  • アイデアスケッチ
  • 鑑賞シート
  • 振り返りシート
  • 評価に使用する資料

生徒が「何を考えればいいのか」「次に何をすればいいのか」が分かる、使いやすい教材づくりを心がけています。



2026年度 年間カリキュラム

今年度の美術Ⅰ・美術Ⅱ・発展美術で取り組む題材を、1期から4期までまとめています。

年間の授業の流れとともに、詳しい授業実践を公開した題材については、それぞれの記事へリンクしていきます。

アートクラスⅠ(美術Ⅰ)の授業では

高校で初めて本格的に美術を学ぶ生徒たちに向けた授業です。

見ること、描くこと、色や形を工夫することを通して、美術表現の基礎を学びます。

期間題材・授業内容授業実践
1期「身近なものを描く」詳しく見る →
1期「3万年のアート史」詳しく見る →
2期図書室でできる美術の授業|「本の世界を線で描く」詳しく見る →
2期図書室でできる美術の授業|本の表紙をデザインし直そう詳しく見る→
2期図書室でできる美術の授業|「この本、ちょっと見て!」本のPOPを作ろう詳しく見る→
2期「色彩学の導入」詳しく見る →
3期「色面構成」詳しく見る →
3期「パッケージデザイン」詳しく見る →
4期「タッチステンドグラス」詳しく見る →

アートクラスⅡ(美術Ⅱ)の授業では

美術Ⅰから美術Ⅱへ step up!

美術Ⅱでは、描いたり、作ったりする楽しさはそのままに、「何を作るのか?」を考えることが大きなテーマになります。
自分の感じたことや伝えたいことをもとに、アイディアを出し、構成を考えながら、じっくりと作品づくりに取り組んでいきます。

また、美術Ⅰで学んだ「形を観る力」「色彩をコーディネートする力」「素材の特性を感じ取る力」を組み合わせながら、自分だけのオリジナル作品を生み出していきます。

表現する楽しさを深めながら、「自分らしい表現」を見つけていく一年にしていきましょう。

期間題材・授業内容授業実践
1期ツブ貝の立体制作詳しく見る →
はがき絵「四季を描く」詳しく見る→
2期絵本作り詳しく見る →
日本美術史詳しく見る→
3期風神雷神図屏風のオマージュ作品詳しく見る →
4期リンゴの量感画~コラージュ詳しく見る →
フォトコラージュ詳しく見る→
ゴッホのひまわりオマージュ作品詳しく見る→
グラフィックデザイン
空想の生物を作ろう

アートクラスⅢ(発展美術)

年間テーマ 「自分らしさを見つける旅」

て「自分らしさ」は、特別な才能や個性を無理に探すことじゃない。
自分が好きなものを好きだと言えること、自分の感じ方を大切にできること。

自分を見つめる
→ 気持ちを形にする
→ 色で伝える
→ 自分が大切にしたいものを社会へ発信する

好きなもの → 自分の身体 → 好きな色 → 大切にしていること → 人に伝えたいこと

一人ひとりの興味や個性を大切にし、自分の表現を深めていく授業を紹介します。
そして「これが、今の私です。」までたどり着く内容になっています。

これまで学んできたことを生かしながら、さらに発展的な制作や鑑賞に取り組みます。

期間題材・授業内容授業実践
1期鉛筆デッサン~テーブルデッサンまで
「わたしをつくるもの」― 自分の好きなもの・大切なものを集めて描く
詳しく見る →
2期企画展を考える~チラシ、チケットまで
「わたしが届けたいもの」― 自分が大切だと思うテーマで展覧会を企画する
「わたしの世界を伝える」― 自分の価値観や好きなものを視覚的に伝える
詳しく見る →
3期色面構成
「わたしを表す色」― 自分が心惹かれる色を出発点に配色を考える
詳しく見る →
4期手のデッサン~塑像まで
「わたしの手」― この手でしてきたこと、これからしたいことを考えながら描く
「想いを伝える手」― 気持ちや意味が伝わる手の形をつくる
詳しく見る →

※授業実践記事を公開したものから、順次リンクを追加していきます。