破って、感じて、心をほどくアート時間
新聞紙を、ビリビリと破ってみる。
とても単純なことですが、音を聞き、紙の感触を感じながら夢中になって手を動かしていると、いつの間にか心が少し変化していることがあります。
このプログラムで大切にしているのは、新聞紙を上手に使って何かをつくることではありません。
アートを通して、今の自分を感じること。
そのために、まず自分の心に静かに目を向けるところから始めます。
🩵 1.Dialogue|自分の気持ちを感じてみる
新聞紙を破る前に、ほんの少し手を止めます。
「今の私は、どんな感じだろう?」
すぐに答えを出そうとしなくて大丈夫です。
楽しい。
疲れている。
なんとなく落ち着かない。
まだ言葉にならない、モヤモヤした感じかもしれません。
まずは判断せずに、今ここにいる自分の心や身体の感覚に、そっと意識を向けてみます。
🩵 2.Describe|言葉にして気づく
感じたことを、今度は自分なりの言葉にしてみます。
「ちょっと疲れているな」
「なんとなくモヤモヤしている」
「今日は穏やかな感じ」
「何か分からないけれど、少し重たい」
きれいな言葉にする必要はありません。
言葉にならなければ、
「なんとなく」
「よく分からない」
でも大丈夫。
言葉にしてみることで、それまで漠然としていた自分の気持ちに気づいていきます。
🩵 3.Drawing|自由に表現する
ここから、新聞紙に触れてみましょう。
ビリッ。
大きく破ってもいい。
細長く破ってもいい。
小さくちぎってもいい。
丸めても、重ねてもかまいません。
「こうしなければ」
「きれいにしなければ」
そんなことは考えず、紙の感触や破れる音を感じながら、手が動くままに楽しんでみます。
上手・下手も、正解・不正解もありません。
今の自分のまま、自由に表現してみましょう。
🩵 そして、もう一度自分を感じてみる
新聞ビリビリが終わったら、もう一度手を止めます。
そして最初と同じように、
「今の私は、どんな感じ?」
と、自分に問いかけてみます。
始める前と同じでしょうか。
それとも、
「なんだかスッキリした」
「楽しくなった」
「少し落ち着いた」
「夢中になっていた」
「思ったほど変わらなかった」
そんな変化があるでしょうか。
変わらなくても大丈夫です。
大切なのは、気持ちを変えることではなく、今の自分がどう感じているのかに、自分自身が気づくことです。
🌿 3Dアートメソッド
この「新聞ビリビリ」は、3Dアートメソッドを使った「心をほどくアートプログラム」の一つです。
Dialogue|対話する
自分の内側に意識を向け、今の気持ちを感じてみる。
Describe|言葉にする
感じたことを言葉にすることで、自分の状態に気づく。
Drawing|表現する
色や線、形、素材などを通して、自由に表現する。
そして表現したあと、再び自分の内側へ。
「今の私は、どんな感じ?」
アートをする前と後の自分を感じることで、小さな心の動きや変化にも気づいていきます。
🌿 アートは、自分に戻るための時間
私たちは毎日の暮らしの中で、いつの間にか「考えること」でいっぱいになります。
けれど、アートをしている時間は、少しだけ頭から離れて、自分の感覚へ戻ることができます。
紙の感触。
ビリビリという音。
動いている自分の手。
そんな「今ここ」に意識を向けているうちに、心の中に少し余白が生まれることがあります。
上手に作らなくていい。
答えを出さなくてもいい。
感じる。
気づく。
表現する。
そして、もう一度自分に戻る。
新聞紙一枚から始められる、小さな「心をほどくアート時間」です。
ファシリテーション
このプログラムで大切にしたいこと
「新聞ビリビリ」は簡単な活動だからこそ、ファシリテーターの問いかけや場のつくり方が大切です。
目的は「参加者の気分を良くすること」ではありません。
参加者自身が、自分の心や身体の感覚に気づくこと。
そのために、次のことを大切にします。
①「スッキリしましたか?」と誘導しない
「楽しくなりましたか?」
「スッキリしたでしょう?」
と聞いてしまうと、それが正しい結果であるように感じさせてしまいます。
代わりに、
「今、どんな感じがしますか?」
「始める前と比べて、何か気づいたことはありますか?」
と、答えを限定しない問いかけをします。
② 最初の自分を丁寧に感じてもらう
活動前のDialogueとDescribeは、とても大切です。
気持ちだけでなく、
「身体はどんな感じ?」
「呼吸は?」
「頭の中は忙しい?静か?」
など、少し視点を広げてみます。
最初の自分に気づいておくことで、活動後の小さな変化にも気づきやすくなります。
③ 最初は破り方のきっかけをつくる
いきなり「自由に破ってください」と言われると、どうしていいか分からない人もいます。
最初は、
「ゆっくり破ってみましょう」
「今度は大きくビリッと」
「細長く破ってみたら?」
「丸めてみてもいいですよ」
など、いくつかの動きを一緒に体験します。
そのあとで、
「では、ここからは自分のやりたいように」
と自由な時間へ移ります。
ファシリテーターが正解を示すのではなく、自由に表現するための入口をつくるイメージです。
④ 小さな変化を大切にする
変化は「楽しくなった」「スッキリした」といった大きなものだけではありません。
「肩の力が少し抜けた」
「呼吸がゆっくりになった」
「破る音が気持ちよかった」
「意外と丁寧に破っている自分に気づいた」
「破ることに抵抗があった」
これらもすべて大切な気づきです。
⑤「何も変わらない」も否定しない
「特に変わりません」
という人がいても、それを変えようとする必要はありません。
変化することが目的ではなく、自分を感じることが目的だからです。
「変わらなかったんですね」
と、そのまま受け止めます。
そのうえで、
「破っているときは、どんな感じでした?」
「好きだった破り方はありました?」
「身体の感じはどうですか?」
など、別の角度から静かに問いかけると、新しい気づきが生まれることもあります。
🩵 ファシリテーターが覚えておきたい一番大切なこと
このプログラムでは、
「変わりましたか?」ではなく、
「何に気づきましたか?」
を大切にします。
感じる。
言葉にして気づく。
表現する。
そして、もう一度自分を感じる。
ファシリテーターは答えを教える人ではなく、その人自身が自分の内側に気づくための時間を、そっと支える人です。
