私たちは毎日、たくさんの色に囲まれて生活しています。
青い空、緑の木々、赤い信号、洋服の色、お菓子のパッケージ、スマートフォンの画面。
普段は当たり前のように「色が見える」と思っていますが、そもそも私たちは、どうやって色を見ているのでしょうか。
色彩学では、色を感覚だけで捉えるのではなく、人間の目や脳の仕組み、色の性質、色同士の関係などから考えていきます。
そして、その知識は絵画だけでなく、ポスター、広告、商品、ファッション、インテリア、Webデザインなど、さまざまなデザインにつながっています。
1.私たちはどうやって「色」を見ているの?
色を見るためには、まず光が必要です。
暗闇の中では、赤いリンゴも青い服も、その色をはっきり見ることはできません。
光が物体に当たると、一部の光は物体に吸収され、一部は反射します。
その反射した光が目に入り、網膜で受け取られ、脳に情報が送られることで、私たちは「色」として認識しています。
つまり、色は物体だけに存在しているのではありません。
光・物体・目・脳
この働きが組み合わさることで、私たちの中に「色の世界」が生まれているのです。
2.色を感じる「錐体」とは?
目の奥にある網膜には、光を感じる細胞があります。
その中で色を見るために重要なのが**錐体(すいたい)**です。
人間の錐体には、大きく分けて3種類があります。
- 長い波長の光に強く反応する錐体
- 中くらいの波長の光に強く反応する錐体
- 短い波長の光に強く反応する錐体
これらの反応の組み合わせによって、私たちはさまざまな色を見分けています。
そして目から入った情報は、そのまま「色」になるわけではありません。
脳が情報を整理し、
「これは赤い」
「こちらの方が明るい」
「この色は鮮やかだ」
と判断しています。
色を見るということは、目だけではなく、脳も一緒に働いている生理現象なのです。
色を整理してみよう
世の中には数えきれないほどの色があります。
それらを感覚だけで扱うのは大変です。
そこで色彩学では、色をいくつかの性質に分けて整理します。
3.無彩色と有彩色
まず色は、大きく2つに分けることができます。
無彩色
白・灰色・黒のように、色みを持たない色を無彩色といいます。
無彩色には赤や青などの「色み」はありませんが、明るい・暗いという違いがあります。
有彩色
赤、黄、緑、青、紫など、色みを持つ色を有彩色といいます。
私たちが一般的に「色」と聞いて思い浮かべる多くの色はこちらに含まれます。
色の三属性
有彩色をさらに詳しく整理するために重要なのが、
色相・明度・彩度
の3つです。
これを色の三属性といいます。
4.色相 ― 何色なのか
色相とは、赤・黄・緑・青・紫などの色みの違いです。
例えば、
赤 → オレンジ → 黄 → 緑 → 青 → 紫
と色を順番に並べて輪のようにつなげたものを色相環といいます。
色相環を見ると、色同士がどのような関係にあるのかが分かりやすくなります。
5.明度 ― 明るいか、暗いか
明度とは、色の明るさの度合いです。
白に近づくほど明度は高くなり、黒に近づくほど明度は低くなります。
例えば同じ青でも、
- 水色は明度が高い
- 紺色は明度が低い
と考えることができます。
明度の差は、文字の読みやすさや画面の見やすさにも大きく関係します。
6.彩度 ― 鮮やかか、鈍いか
彩度とは、色の鮮やかさの度合いです。
鮮やかな赤や青は彩度が高く、灰色がかった落ち着いた赤や青は彩度が低くなります。
彩度が高い色は目立ちやすく、元気で強い印象を与えます。
反対に彩度を下げると、落ち着いた、穏やかな印象になります。
同じ色相でも、明度や彩度を変えるだけで印象は大きく変化するのです。
色彩学からデザインへ
色の性質が分かったら、次は色と色を組み合わせることを考えてみましょう。
色の組み合わせを配色といいます。
デザインでは、「好きな色を使う」だけではなく、
何を伝えたいのか、どんな印象にしたいのか
を考えて色を選びます。
ここでは基本となる3つの配色を見ていきます。
7.同一配色
同じ色相を中心に、明度や彩度を変えて組み合わせる配色です。
例えば、
水色・青・紺色
のような組み合わせです。
同じ色相を使うため、全体に統一感が生まれます。
印象
まとまり・統一感・落ち着き
シンプルにまとめたいデザインにも向いています。
8.類似配色
色相環で近くにある色同士を組み合わせる配色です。
例えば、
黄+黄緑+緑
赤+赤紫+紫
などです。
色相に少し変化がありながらも共通性があるため、まとまりのある自然な配色になります。
印象
調和・自然・やわらかさ
植物や風景の中にも、類似した色の組み合わせをたくさん見つけることができます。
9.対比配色
色相環の中で離れた位置にある色を組み合わせる配色です。
色の違いが大きくなるため、お互いの色を目立たせる効果があります。
例えば、
赤と緑
黄と青紫
青とオレンジ
などの組み合わせがあります。
印象
強さ・活発さ・メリハリ・目立つ
ポスターや広告、スポーツ用品、商品パッケージなど、「ここを見てほしい」というデザインにも使われます。
ただし、強い色を同じ面積で使いすぎると、落ち着かない印象になることもあります。
どの色を主役にするのかを考えることも、デザインでは大切です。
配色に「正解」はある?
色彩学を学ぶと、
「この配色が正しい」
「この組み合わせは間違い」
と思ってしまうかもしれません。
でも、デザインで大切なのは、単にルールを守ることではありません。
例えば「静かな印象」にしたいなら、類似した色や低彩度の色が役立つでしょう。
反対に「遠くからでも目立たせたい」なら、色相や明度の差を大きくする方法があります。
つまり、
目的によって、ふさわしい色は変わります。
色彩学は、色を自由に使えなくするためのルールではなく、自分が表現したいことを、より効果的に伝えるための道具なのです。
身の回りのデザインを観察してみよう
授業の後は、身の回りにあるデザインを見てみましょう。
お菓子のパッケージ、飲料のラベル、学校のポスター、洋服、文房具、Webサイトなど、私たちの周囲にはたくさんの配色があります。
「これは何色と何色を使っている?」
「明度は高い?低い?」
「彩度は?」
「同一配色・類似配色・対比配色のどれに近い?」
「なぜデザイナーは、この色を選んだのだろう?」
そんな視点で見ていくと、いつもの景色が少し違って見えてきます。
色を見ることから、色を考えることへ。
そして、色を使って伝えることへ。
色彩学の知識を、これからの作品制作やデザインにつなげていきましょう。
