美術室を飛び出して、図書室でできる美術の授業。
今回は、図書室にある本の中から一冊を選び、自分なりの「新しい表紙」をデザインする課題です。
本の表紙は、その本と読者が最初に出会う場所です。
タイトルの文字、絵や模様、余白、明暗。
限られた一枚の中に、「この本はどんな本なのか」「どんな印象を伝えたいのか」を考えて構成していきます。
今回はあえて色を使わず、鉛筆だけで白・灰色・黒の世界をつくることにしました。
課題「本の表紙をデザインし直そう」
対象
高校1年生 美術Ⅰ
使用するもの
- 図書室から選んだ本 1冊
- コピー用紙
- 鉛筆
- 消しゴム
特別な画材を使わず、図書室でも取り組める課題です。
この課題のねらい
この授業では、上手に絵を描くことだけを目的にしていません。
大切にしたのは、次の3つです。
① 本からイメージを広げる
本の題名や内容を手がかりに、
「どんな雰囲気の本だろう?」
「自分ならどんな表紙にするだろう?」
と考えます。
同じ本を選んでも、受け取るイメージは一人ひとり違います。
その違いも、この課題のおもしろさです。
② 「伝わるデザイン」を考える
表紙には、絵だけでなく文字があります。
タイトルをどこに置くのか。
大きくするのか、小さくするのか。
絵や模様をどこまで入れるのか。
あえて何も描かない「余白」をどのくらい残すのか。
一枚の紙面全体を見ながら、文字・絵・模様・余白の関係を考えます。
③ 鉛筆の表現を工夫する
今回は色を使いません。
使えるのは、
白・灰色・黒。
鉛筆の筆圧を変えたり、線を重ねたりすることで、同じ鉛筆でもさまざまな表情が生まれます。
色がないからこそ、明暗や線の美しさが見えてきます。
制作の手順
STEP1 本を一冊選ぶ
図書室を歩いて、自分が「ちょっと気になる」と思った本を一冊選びます。
小説に限りません。
自分が表紙を作ってみたいと思える本を探します。
STEP2 表紙のアイデアを考える
選んだ本を見ながら、
- 題名をどこに入れるか
- 著者名をどこに入れるか
- どんな絵や模様を入れるか
- 白・灰色・黒をどう使うか
- どこに余白を残すか
を考えます。
今ある表紙をそのまま写すのではなく、**「自分だったら、この本をどんな表紙にする?」**と考えることがポイントです。
STEP3 鉛筆で新しい表紙を制作する
コピー用紙一枚を本の表紙に見立てて、デザインします。
表紙には必ず、
- 本の題名
- 著者名
- 題名や内容から考えた絵・模様
- 白・灰色・黒の濃淡
を入れます。
紙いっぱいに描く必要はありません。
何も描かれていない白い部分も、立派なデザインの一部です。
最後に振り返る
作品が完成したら、用紙の裏側に、
「自分が工夫したところ」
を2文以上で書きます。
たとえば、
「題名が最初に目に入るように文字を大きくしました」
「少し怖い物語なので、黒い部分を多くしました」
など、なぜそのデザインにしたのかを自分の言葉で振り返ります。
作品を作って終わりではなく、自分の表現について言葉にするところまでを一つの制作と考えています。
図書室だからこそできる美術
この課題のおもしろさは、最初から「何を描くか」が決められていないことです。
図書室の棚を歩き、
本を眺め、
題名にひかれ、
一冊を手に取る。
そこから制作が始まります。
美術の授業ですが、入口にあるのは「本」です。
そして本から受け取った言葉や物語を、今度は文字・線・明暗・構成という視覚表現に変えていく。
読むことと描くこと。
言葉とイメージ。
国語や読書と美術の間を行ったり来たりするような授業になりました。
特別な画材がなくても、美術はできる
今回使ったのは、図書室の本とコピー用紙、鉛筆、消しゴムだけです。
美術の授業というと、絵の具や専門的な画材が必要だと思われがちですが、身近なものだけでも十分に「表現すること」はできます。
むしろ道具が限られているからこそ、
「どうしたら伝わるだろう?」
「黒をどこに置こう?」
「ここは白いままの方がいいかな?」
と考えることになります。
美術は、きれいに描くことだけではなく、考えたことを形にすること。
そんなことを、生徒たちにも少しずつ感じてもらえたらと思っています。
