図書室でつくる、物語の時間
― 絵本制作 10時間の授業設計 ―
夏の美術室は、正直、過酷です。
エアコンのない空間での制作は、生徒にも教師にも負担が大きい。
それならば、環境を嘆くのではなく、
空間に合った授業をつくろう。
そう考えて、図書室でできる課題として
「絵本制作」を強化することにしました。
図書室は、本に囲まれた静かな場所。
ページをめくる音、紙の匂い、余白の広がり。
絵本は、その空気とよく似合います。
一昨年から取り入れている絵本課題は、生徒の反応も良く、
「物語を描く」ことへの楽しさを実感しています。
今回は、1年生と3年生、それぞれ10時間前後の構成を整理しました。
なぜ「絵本」なのか
図書室という空間は、物語を考えるのに最適です。
静かに構想できる
実物の絵本をすぐ参考にできる
画材が最小限で成立する
45分でも進行できる
絵本は、
構成力
色彩感覚
余白の扱い
言語化
視線誘導
といった、美術の基礎力を総合的に育てる教材です。
1年生:完成体験を重視する
テーマ例
「わたしの小さな物語」
10時間構成(例)
絵本分析(ページ数・文字量・見開き構成)
テーマ決定
一行プロット作成
ミニネーム(ページ割りラフ)
下描き
着彩・仕上げ
1年生はまず「最後まで完成させる」経験を重視します。
既成サイズ(B5〜A4)の無地絵本を使用すると安心です。
3年生:設計力を育てる
テーマ例
「誰かに届ける一冊」
10時間構成(例)
絵本構造分析
コンセプト設計(誰に?何を?)
ダミー本制作
ネーム制作
本制作・仕上げ
3年生は、サイズ設計から行うのがおすすめです。
画用紙を切って自作することで、見開きの強さや構成力が育ちます。
展示前提の設計
展示は美術室、または図書室の一角を想定。
おすすめは「見開き固定展示」。
それぞれの作品から
いちばん見せたい見開きを選ばせ、開いた状態で展示します。
理由:
絵としての迫力が出る
通路でも目に止まりやすい
作品比較がしやすい
写真記録がしやすい
キャプションは統一フォーマットで。
タイトル
作者名
ひとことメッセージ
それだけで展示全体の完成度が一段上がります。
参考になる絵本作家
五味太郎
構図の明快さ、色のシンプルさを分析できます。
ヨシタケシンスケ
少ない線と余白の使い方、発想の転換が学べます。
荒井良二
色彩の自由さ、空間の広がりを体感できます。
教材として準備するもの
分析用絵本(5〜10冊)
絵本設計ワークシート
ミニネーム用テンプレート
ダミー本用コピー紙
鉛筆・色鉛筆・細マーカー
絵の具は必須ではありません。
制限があることで、物語が強くなることもあります。
おわりに
絵本制作は、単なる作品づくりではありません。
それは「伝える設計」を学ぶ時間です。
図書室という静かな空間で、
一人ひとりが物語を紡ぐ10時間。
ページをめくるとき、
そこにはきっと、
その子だけの世界が広がっています。
その世界に、そっと立ち会えること。
それが、この授業のいちばんの喜びです。
もしよければ、
あなたらしい署名文も入れますか?
「アートは心の居場所になる」みたいな一文を最後に添えても素敵ですよ。
図書室でつくる、物語の時間