卓上デッサンを制作、モチーフを配置する上で重要なポイントを解説します。
まずは目次
1.モチーフの見せ方など
2.モチーフの構成のコツ
今回はこれだけ
では、本編です。
1.モチーフの見せ方など
◯箱型のモチーフは必ず3面見えるようにするべし。側面が見えないと奥行きやモチーフの特徴が説明しづらくなります。
◯細長いモチーフは斜めに配置すべし。画面に入れたときの動きも垂直ではなく斜めにしたほうがよく見えやすいです。
◯布などの平らな形状のモチーフはそのまま惹かずに、折り目をつけたり他のモチーフにかけたりすべし。立体的に形を作った方が描きやすく、色幅も増え、質感なども表現しやすくなります。
2.モチーフの構成のコツ
◯一つだけ背が高いモチーフがある場合、そのまま描く場合は画面の一番手前に配置すべし。高さのあるモチーフが小さくなってしまうことで、他のモチーフも相対的に小さくなり、寂しい画面構成におちいってしまいます。
◯近景、中景、遠景(手前、中間、奥)といったように空間的に配置、またそれぞれの配置に動きをつくるべし。また、画面の右上、左上などモチーフが配置されず、寂しくならないように配置することは大事です。
◯モチーフの傾きを揃えないように配置すべし。モチーフの傾きが似ていたり、3個以上のみチーフが同じ直線状に並ぶと画面の動きが減りつまらなくなるためです。
◯見せ場を作るべし。描き込めるモチーフを手前に持ってきて頑張ると評価が高くなるのです。
引用先:新美ブログ(https://www.art-shinbi.com/blog/20200504/13/)
卓上静物デッサンの3つのポイント
これからデッサンを勉強する人から、さらに向上を目指す人まで、鉛筆デッサンの制作プロセスや描き方のポイントを提示しながら、スキルアップをお手伝いするデッサンハウツーブログ。
今回は「卓上デッサン」についてです。
東京造形大学入試や女子美術大学、桑沢デザイン研究所などの入試でよく出題される卓上デッサン。
普通に”静物デッサン”はよく耳にしますが、そもそも卓上デッサンってなんでしょう?
卓上静物デッサンとは?
卓上静物デッサンとは、複数のモチーフが各人に手渡され、それらを自分で机上(台上)に配置、構成してデッサンする形式を言います。
「配布した素材を、条件の範囲で自由に配置し、解答用紙に鉛筆でデッサンしなさい。」
素材
1.ブタの線香台。
2.おたま。
3.ソフト透明下敷き。
4.赤いボール。
5.ランチョンマット
こちらは2022年の東京造形大学の入試で出題されたものです。
「モチーフを下記の条件内で机上に配置して鉛筆で画用紙ボードにデッサンしなさい 。ただし、箱の表面にワインボトル専用パッケージとしてグラフィックデザインを想定して描くこと」
1.ワインボトル 1本
2.紙製ボックス 1個
3.布(タオル地) 1枚
4.紙パック卵(卵6個入り) 1パック
5.レモン(透明セロファン袋2個入り) 1袋
こちらも2022年の女子美術大学のヴィジュアルデザイン専攻の入試で出題されたものです。
ちょとした言い回しの違いはありますが、どちらも自分で配置して描きなさいという課題です。
一つひとつのモチーフの描写に求められることは、卓上デッサンだからといって何か特別なものが要求されるわけではありません。形を正確に捉えられているか、質感の表現ができているか、固有色の描き変えがしっかりとできているかなどを注視しながら描きましょう。
では”卓上”ならではのコツはなんでしょう?
ポイント1:構図
一番のポイントはズバリ「構図」です。ほとんどの人は、まず配布されたモチーフを台上に組んで、それから構図を決めていくと思いますが、これは間違いです。卓上デッサンでは、モチーフを組む前に想定で画面内にモチーフを配置していきます。つまり先にモチーフを組んで構図を決めるのではなく、絵の中にベストな配置を想定してあたりを取って構図を決めていくのです。そのときに気をつけることは、構図をなるべく大きくとれるように意識して画面の端からあたりをつけていきます。
上下左右に空きすぎている辺がないことを確認し、ある程度物の配置が確定したら、モチーフの方を絵に合わせて配置します。さらに、形をとっていき、不自然な形の重なりになってしまったり、接点が見えずらいなどがあれば、 モチーフを動かして調整します。こうしていくと、「構図が悪い」ということは起こりません。3時間の課題では、ここまでを30分ぐらい行い、全てのモチーフを画面内に登場させましょう。
ポイント2:モチーフの配置=空間構成
次に難しいのは物の配置ではないでしょうか。物の配置は、近景、中景、遠景を意識して空間を構成しましょう。台上の接点は画面の下辺に近いほど自分に近い(手前)にあることになります。この点がジグザグ(Z形) になるように配置するのが良いです。なんとなく等距離に配置してしまったり、一箇所にまとまってしまわないように気をつけます。 また画面が横位置の場合、瓶など背の高いモチーフを中景より後ろに配置してしまうと全体のスケール感が小さくなってしまうので、近景に配置した方が効果的です。
ポイント3:光の設定
試験では座った席が「描きやすく、空間や形を見せやすい光」であるとは限りません。必ず絵の中で設定し、空間が見せやすい光を演出する必要があります。ポイントは、「上からの光(トップライト)を一番強く」「逆光にはしない」です。これを基本とした上で、構成によって少し右手前から当てるか、左手前から当てるかを決定します。
卓上デッサンのまとめ
受験校や専攻によってモチーフの傾向や密度に多少の差がありますが、卓上デッサンが出題される場合は、二次元上(紙の上)に三次元空間(現実空間) をしっかりと再現できるかどうかが、求められていることの全てです。ここまでにあげたポイントは、あくまでも「それ」(現実空間の再現)をできるだけやりやすくするためのポイントにすぎません。
ですから、これらのポイントを押さえた上で、しっかりと描き切ることができなければものの質感や、色などを伝えることができないし、完成度がなければいくら形が合っていても、巧みに構成されていても評価は得られないでしょう。卓上デッサン課題に限ったことではないですが、とにかく、最後はしっかり描き切って終わる! ことを忘れないようにしましょう。
引用先:横浜美術学院(https://e-s-w.com/how-to-draw/how-to-draw-drawings/)
モチーフの数
モチーフの数は一個でも複数個でも、同じように1つのものとして捉えます。すると、ルールはシンプルになり扱いやすくなります。
複数個のモチーフをセッティングする場合、絵になりやすいようにまとめ置かれることがほとんどです。あっちこっちにバラバラに置くことはあまりありません。
つまり、モチーフは点在させるよりもまとめた方が絵にしやすいということです。もし、あなたが自分で複数個のモチーフを組むときは、モチーフどうしの間隔を空けすぎず、寄せて置くようにしてください。
これはそのまま画面の中にも言えることです。画面内にバラバラとモチーフがあるよりも、ひとかたまりになったものとして捉えた方がいいバランスになりやすいです。これは画面の中に統一感が表れるからでしょう。
一個のりんごは当然1つですが、人物とその人物が座っている椅子を描くときも、人物と椅子を1つのものとして捉えます。
また、瓶とレンガとボールの3つをモチーフとするときも、その3つが一つの形となるように捉えます。
複数のモチーフを複数のまま画面内にどう配置するかを考えると、すごく複雑で難しくなります。
しかし、上述のようにモチーフをひとまとめにすれば、複数のモチーフであっても、単体のモチーフと同じルールを適応して扱うことができます。
真ん中に配置する
モチーフの基本の配置は画面の真ん中です。ひとかたまりとして捉えたモチーフを、画面の中央に配置します。
モチーフが複数個ある状態では、画面の中央に配置するのはとても難しかったと思います。しかし、モチーフが何個あっても、それを一つとして捉えることで、画面の中央に配置するのが簡単になります。
モチーフを画面の中央に配置するのは、余白のバランスを均等にするためです。
悪い構図の例として、「画面の左右、または上下に寄っている」「余白のバランスが悪い」というものがあります。
とは言っても、「画面の余白は大丈夫かな」「画面の端に寄り過ぎていないかな」といちいち考えて構図のバランスを見るのは効率がいいとは言えません。
そこで、このどちらにでも対応する方法として、単純に「画面の中央にモチーフを配置する」という方法をとります。
中央に配置する方法は、モチーフを四角で囲った4辺と、画面の枠の4辺の距離を、上下左右均等にすることです。モチーフの中心を求めて、それを画面の中心に合わせる方法は使いません。
中心と中心を合わせても、その後でモチーフを四角で囲った4辺と、画面の枠の4辺の余白はどのぐらいかを考えるからです。これでは二度手間になります。
そこで、効率良く、初めからモチーフの4辺と画面の端の間の余白を均等に合わせます。すると、中心は勝手に揃います。
また、モチーフを四角で囲ったとき、縦長になった場合は画面を縦に、横長になった場合は画面を横にします。
モチーフの大きさ
ひとかたまりのモチーフを画面の中央に配置しようとするときに、画面の余白をどれぐらいにするのか、という問題が出てくると思います。
モチーフは画面の中で大きすぎても小さすぎてもいけません。小さいモチーフを大きく描くと不自然に見えます。逆に大きなモチーフを小さく描いたら描写がしづらいです。
そこで、丁度良い基準を知っておきましょう。それは、①モチーフは等倍~1.2倍の大きさで描く ②モチーフより画面の方が小さい場合は画面目一杯にモチーフを入れる この2点です。
例えば、B3の画用紙にりんごを描く場合はりんごの等倍~1.2倍で描きます。画面の余白は大きくなりますが、これ以上大きくすると不自然に見えるので余白は大きくて大丈夫です。
人物をB2の紙に描く場合は、画面目一杯に人物を入れます。人物の方が画面よりはるかに大きいからです。このようなときに余白を大きくとって人物を配置すると、一般的に悪い構図と考えられるモチーフが小さすぎる状態になります。
このように、不自然に感じない構図をルールとして決めておくことで、無限にある構図の可能性の中から効率よく、いい構図を選ぶことができます。
以上をふまえると、構図の基本は「見る側に不自然さを感じさせないこと」だと言えます。画面の端に寄っていては何だか気持ち悪く、大きさに違和感のある構図はそちらが気になって内容を鑑賞しづらいです。
そのような構図は避け、まずは適切な大きさで画面の中央にモチーフを配置しましょう。
構図の発展は基本ができてから
上述のような構図の取り方に慣れたら、あえて画面の端に寄せる、モチーフをかなり小さく入れる、などを行ってもいいでしょう。
構図はテーマを表すのに重要な要素です。
> 関連テキスト「デッサンでよい構図とはテーマが伝わる構図」
ただ、目の前のものを描写する訓練をするときは、そのようなことは考える必要はありません。とにかくシンプルないい構図、安心して鑑賞できる構図を取るようにしてください。
そもそも、基本の構図が取れないということはモチーフを画面内に思うように配置できていないレベルです。
「中央にモチーフを配置したいのに右にずれてしまった」「等倍で描きたいのに2倍の大きさで描いてしまった」という人が、イメージ通りの構図を自由に描けるとは思えません。
まずは基本の構図の取り方に従って、それをきちんと画面に表すところから始めてください。
引用先:デザインラボラトリー(https://dessinlaboratory.com/)